インターネットの普及で無料の情報が溢れる時代、料理やお菓子のレシピがいくらでも手に入るようになりました。

小さい頃からモノを作るのが好きで、初めて手にした『お菓子も作っていい?』というレシピ本は、穴が空くほど眺めて読んで、小学4年の頃から、クレープやクッキー、プリンにマシュマロなどを学校が休みのたびに作っていました。今思えば、この1冊が全てだったことは、私にとって幸運だったと言えます。

というのは、迷いがないから。

同じレシピで作っているのに上手くできる時もあれば失敗することもある。なぜだろうと考えます。『お菓子も作っていい?』は私にとってのバイブルでしたから、レシピがおかしいなどと疑うことはしませんでした。何度も作って、上手くできる確率が高まってくると、そうか!とコツが掴めてきます。他にもレシピが沢山あって、これは上手くいかなかったから次、と変えていたら、いつまでたっても「そこ」にたどり着けません。

同じものを同じレシピで何度も作る。今、生徒さんにするアドバイスは、この時には理論的には理解していなかったけれど、職業としてモノを作るようになってから、深く腑に落ちた最重要ポイントです。

え?そんなこと?と思われるかも知れませんが、1回より3回、3回より10回、100回、1000回と作り込むほどそれが自分のものになります。その先にアレンジや改善ができるようになる、そういうしくみです。

モントリオールでも人気のカフェは1日に1000杯近くのコーヒーを提供し、ベーグル店では10000個以上のベーグルを焼いています。私も試行錯誤を経て完成させたひとつのレシピを繰り返し作ることで、私のマフィンやビスケット、スコーンにベーグルができあがっています。

レシピをたくさん集めることはナンセンス。
レシピはひとつでいい。 それをひたすら作りましょう。