きっかけの街 モントリオール

モントリオール製菓学校公式ブログ。 モントリオールのこと、お菓子のこと、北米の日々を綴ります。

タグ:モントリオール

FullSizeRender
おしゃれな朝食の定番、フレンチトースト。

昨日ご紹介した Lémeac の名物でもあります。 こちらでは、ブリオッシュをベースにしたフレンチトーストに、ブランチにはバナナをたっぷりのせて、デザートには自家製アイスクリームと自家製メープルキャラメルをたっぷりかけて出しています。

フレンチトーストは、パンを牛乳と卵と砂糖の液に漬けてから焼くものですが、ここのデザートバージョンはひと工夫もふた工夫もされています。

なるべくふわふわのブリオッシュを使用。そして、卵、牛乳、生クリームと砂糖の液には少量のスパイス類が入り、甘さを引き締めるアクセントに。液に浸したら、厚いフライパンにバターを熱して両面焼き、さらにオーブンに入れて7~8分。こうして、外はカリッと、中はしっとりふんわりのフレンチトーストが焼きあがります。

上にのせる自家製アイスクリームも特筆もの、ドルチェ・デ・レチェ(牛乳のジャム)入りで、ミルク感たっぷりです。更にメープルキャラメルがかかっているのですから、これぞ、モントリオールのフレンチトースト!といった感じです。

少々気をつけたいのが、フランス語メニューの表記。ブランチには Pain doré(パン・ドレ)、デザートは Pain perdu(パン・ペルデュ)という名前で出しているので、混乱なきよう。英語メニューは両方 French toast (フレンチトースト)です。

ちなみに、パンドレ はフランス語で「黄金のパン」、パンペルデュ は「だめになったパン」という意味で、主に前者はケベックで、後者はフランスでそう呼ばれているようです。ケベックの方がポジティブな呼び方で、何だか気質が表れていて微笑ましい。

Lémeacのテラス席は、冬でも暖房が効いていて心地よいです。テラスでフレンチトーストをいただきながら春を待つことといたしましょう。



IMG_0587
モントリオールの神なる山、Mt-Royal(モンロワイヤル)は、冬もにぎやか。ビーバーレイクでのスケートはもちろん、チューブなど、子どもから大人まで楽しめるアクティビティが目白押しです。

さて、昼に思いっきりスポーツを楽しんだら、夕刻からトレッキングに出かけませんか?

2月の毎週金曜と土曜の18時から、ガイドつきでモンロワイヤルを歩くSnowshoes excursion というアクティビティがあります。2.5~3kmを1時間半ほどかけて歩くツアーで、参加費はひとり$22。歩くといっても、冬の夜に普段行けないような「秘密の場所」へも連れて行ってくれる、なかなかできない冒険のような経験です。

そして、お楽しみはホットチョコレート。冬の雪山では何よりのご馳走です。目の前に広がる初めての世界に心身ともにリフレッシュ、多少の筋肉痛は覚悟しますが、翌日は土日ですから、休みならゆっくり眠れますし。

2月14日のバレンタインデーには特別に開催、雪の中でスパークリングワインとチョコレートが楽しめますよ。参加費は$30ですが、バレンタインディナー前に、レストランのウェイティングルームで過ごす代わりにいかがでしょうか?

Les amis de la montagne(レザミ・デ・ラ・モンターニュ)という団体が行っています
Snowshoe excursion
バレンタインデースペシャル



FullSizeRender
今日のレストランは、プラトー地区のお洒落なローリエ通りにある、Lémeac
こちらでは、一日の終わり、22時以降にお得なメニューを提供しています。

前菜とメイン、コーヒーで$28。このお得なサービスが始まった当初は、22時からの$22メニューだったのですが、少しづつ値上がりしています。それでも充分お安い。

メニューは、肉も魚もベジタリアンオプションもあって、バラエティに富んでいる上、質もボリュームも申し分なし。誰もが満足できる内容です。個人的には、前菜が肉ならメインはシーフード、またはその逆のオーダーにしています。

いつ行っても満足しますし、どなたをお連れしても好評。したがって、何度も足を運ぶうち、ほとんどの22時からのメニューを制覇しました。フランス語がわからないうちは見るのも辛いメニューで、英語メニューに助けを求めていましたが、興味のあるものは覚えるものですね。今ではフランス語メニューの方がしっくりきて、料理の画像が浮かびます。
Lemeac
写真は " Pot au feu de saumon à la fleur de sel " サーモンのポトフ。 大きな蓋付きのキャセロールに入って出てきます。味の決め手は、フルールドセル(塩の精華と呼ばれる質の高い大粒の天日塩)、シンプルですが、素材そのものの味が引き立っていて、寒い冬にはぴったりです。

時間は少々遅めですが、夜遊び大好きのモントリオーラーにとっては、22時は夜のはじまり。いつも混んでいますので、予約して出かけましょう。

Lémeac


pier66
今日は、モントリオールのハイエンドなお店が集まるベルナール通り(rue Bernard)にあるシーフードレストラン Le Pier 66 のご紹介です。

毎日、18時以前と21時以降は Table d’hôte を $24で提供しています。というのも、この通りにはテアトル・ウートウルモン(théâtre Outremont)があり、ショーの前後に食事を楽しむお客さん向け。ニューヨークのブロードウェイとまではいかずとも、同じような気分が味わえます。
 
もちろん、ショー以外のお客さんもウェルカムです。更に嬉しいことに、火曜と水曜はドリンク1杯オーダーで、牡蠣が$1で提供されます。 
FullSizeRender
こちらは、土日のブランチメニュー、自家製シーフードのスモーク類とベーグル、野菜やピクルスのセットです。プレゼンテーションが何とも素敵で、幸福感は最高潮に達します。しかも、たっぷり二人前あって$16と、かなりお値打ち。

このレストラン、ローカルのシーフードにこだわっていて、アジアの魚は出さないそうな。オープンしてもうすぐ2年、今後も楽しみです。

Table d’hôte は、牡蠣3ピースか本日の前菜+アラカルトから一品で$24
Le Pier 66


IMG_0572
冬がまだまだ長引くそうなので、何か楽しい話題を、と思い、モントリオールのお得なおすすめレストランをいくつかご紹介しようと思います。

今日はモントリオールの真ん中、サンローラン通り(boul St-Laurent)にある、ステーキレストラン Moishes - 今年80周年を迎える、老舗ステーキレストランです。

もともと、"Romanian Paradise" という店名だったことからも伺えるように、ユダヤ系のレストラン。第二次世界大戦の開始と同時に現在の店名に変更しました。そんなエピソードからも、当時の世界情勢を少しだけ想像することができます。

さて、ユダヤ系ステーキの特徴は?といいますと、オリジナルスパイスを使ってシンプルな炭火焼にし、肉そのものの美味しさを堪能できることです。

このスパイスは、東ヨーロッパのピクルス用スパイスから発展したもので、スモークミートの老舗 シュワルツ が最初に作ったと噂されています。今では「モントリオールステーキスパイス」として(このレストランのものは Moishes Steak Spice として)スーパーなどでも売られていますが、基本は、ガーリック、コリアンダー、黒こしょう、カイエンペッパーフレーク(唐辛子)、ディル、そして塩のブレンド。各レストランやメーカーによって、その他のスパイスを加えたり、配合を変えたりしているようです。

さて、レストランに話を戻して、何がお得かと言いますと、、
水曜から土曜までの21時以降、前菜とメインで$29になるサービスがあるのです。

夜遅めの食事でも大丈夫、という方にはぴったり。そうでなくとも時間を調整するだけの価値があります。
FullSizeRender
ステーキは、ポテトとピクルス、コールスロー付き。真っ白なテーブルクロスに映える、シンプルで凛とした食卓です。

お得な時間帯でも少しお洒落をして出かけましょう。あなたもモントリオールの歴史の一部になるのですから。


Moishes

21時以降のメニュー


FullSizeRender
Restaurant L'Inconnu 
5115 St Laurent

FullSizeRender
L'Entre-Pots 
1995 Rue Masson

FullSizeRender
Le Vieux Velo
59 Beaubien Est

FullSizeRender
Sparrow
5322 St- Laurent

FullSizeRender
Arts Cafe
201 Fairmont West

FullSizeRender
Larry's
9 Avenue Firmount Est

厳しい冬の至福の時間、ブランチタイム。
テラスの季節になるまでは、室内でゆっくり楽しみましょう。


84B1BF81-9B70-4119-A975-7A49AABB719E
今年の冬は北米各都市で、かなり厳しい冬を迎えていますが、冬も折り返しにさしかかった(と信じたい)今、モントリオールでは雪の行き場がなく困っております。

毎朝早くに除雪をし、雪を大型ダンプに積んで数箇所の雪の行き場に運ぶのですが、これがもうキャパオーバー。115cmまでの積雪には対応でき、ここ10年このような問題が起こることはなかったのですが、既に145cmの積雪が記録された今年は、そうもいかないようです。

もうすぐ始まる平昌オリンピックは、雪不足に悩まされているとか。人間が欲しい欲しくないに関係なく、自然はあるがまま、コントロールがききません。

モントリオールの春はまだまだ遠い、と昨日Groundhog day の占い結果が出たようです。占いを信じずとも、この雪の山を目の前にすれば、受け入れざるを得ない現実だと思えます。

唯一、期待が持てるのは、メープルシロップの収穫。寒暖の差が大きいほどメープルシロップには好条件、厳しい冬のご褒美を待つこととしましょう。

DSCF6002
モントリオールで営業していたカフェのお客さま。学生やノマドワーカー、近所の方々、ファミリー、と、客層はバラエティに富んでおりましたが、この方は、そのどの層にも当てはまらない存在感がありました。

いつもシックな黒のお洋服、サングラスをかけていることも多かったのですが、その姿を見るたびに思い出したのは、桃井かおりさん。

カフェの最後のお客様が彼女、うちの Momoiさんでした。オーダーは、アイスアメリカーノ。晴れた暑い日のことで、今でも鮮明に憶えています。

C vs M
モントリオールの英語系の2大学、コンコルディア大学とマギル大学。

ライバル同士のそれをテーマにしたドキュメンタリー映画が、本日2月2日(金)コンコルディア大学にて無料公開されます。

モントリオールの大学生の日常を綴った映画、しかも両校学生の製作です。

Condordia University EV Building
Room EV 1.615
Address : 1515 St-Catherine West Montreal H3H 2L5
19:00~20:30

image
やりました、Hydro Québec。

ケベック州営の電力会社が、アメリカのマサチューセッツ州に、今後20年間、電力供給をするという契約を結ぶことになりました。この契約に対しては40もの候補があったのですが、その競争に勝ち、見事歴史的大型契約を勝ち取りました。

自然の恩恵は大きいです。その土地の豊富な水源を活かして生み出すクリーンなエネルギーは、ケベック州の大きな財産。この契約で、ケベック州は毎年、約500億円もの利益を安定してあげることになります。冬が厳しいということを最大のデメリットのように人々は言いますが、そういう土地だからこその恩恵があるのです。メープルシロップ然り。

自然には敵いません。

FullSizeRender
写真は、1907年から2009年までモントリオールの人々を楽しませてきた競馬場、Blue Bonnet。(後にHippodrome de Montréal に改名)

この近くにあったのが、オレンジ・ジュレップ。この2つの組み合わせが、当時の人々の週末の定番だったとか。

初代オレンジ・ジュレップの建物↓
Julep1
経験してみたかったな、と思います。今ならどこへでも行けますが、過去へは戻れない。どれだけテクノロジーが発展しても、過去のその時代を肌で感じることは出来ない、と思うと、だからこそ、歴史あるアイコンは残ってほしいと切に思います。


o (2)
モントリオールのアイコン、オレンジジュレップ。歴史は昨日のブログでご紹介しましたが、もう少し続きを。

この、誰もが知ってるドリンクは、もともと家庭で作っていたとあって、再現レシピが色々出ています。オレンジを使っていることは確かなのですが、ちょっぴりミルキーな感じで、ただのオレンジジュースではない、というのがハマる要因なのかも知れません。

というか、ここを通ったら寄らなきゃ、という暗黙のルールがあるようにも思いますが。

さて、そのレシピですが、創業者のジボーさんが家庭で作っていたものですが、より安く作れるように、コストのかかるオレンジジュースの量を減らして、代わりに牛乳や卵白を入れているとか。え、それが功を奏したの?と思うと何だか複雑な気持ちになりますが、食べ物や飲み物は余計なことを考えずにいただくのが、一番幸せで正しいジャッジができます。

話をレシピに戻しますと。

様々なコピーキャットレシピが出回りましたが、実はパテントをとっていたものが公開されました。但し、ボトル販売用で、店頭のものとは少し違うようです。スキムミルクパウダーは牛乳に、ペクチンは卵白に、それぞれ相当量を置き換えると良いらしいので、試してみる価値ありです。

それにしても、Julep(ジュレップ)という洒落た名前もレシピも、パテントを取っていたとは、すごい。商売上手ですね。
Julep


IMG_0473
このオレンジの大きな球体、モントリオーラーなら誰もが知ってる Gibeau Orange Julep(ジボー・オレンジ・ジュレップ)というファストフード店です。

このお店を有名にしたのは、飛行機からも見える、この大きなオレンジの建物。そして、名物のドリンク「オレンジ・ジュレップ」です。

もともと、創業者のジボー(Gibeau)さんが、家庭で作っていたドリンクを公園で売り出し大人気を博したことが始まり。1932年のことです。その後、1945年に、当時は全く開発が進んでいなかったDecarie という道路沿いに、今より若干小さな2階建てコンクリートの球体のお店を構えました。今でも目を惹く形ですから、当時は皆が度肝を抜かれたことでしょう。ジボーさん一家が、その2階に暮らしていると信じていた人も多かったようです。

現在のお店になったのは、1966年。Decarie の道路拡張に伴って少し移動しなければならないことから、大きな大きなオレンジ(直径12m、内部は3階建て)が生まれました。

当時のカナダもアメリカも、車で来て車の中で食事をするドライブスルーがメジャーだったので、ローラースケートで商品を運ぶウエイトレスが活躍していました。映画でしか見たことはありませんが、古き良き時代です。他のドライブスルーがこれを廃止した後も、このお店のローラースケートは、なんと2005年まで続きました。

上空から、この大きなオレンジが見えると、モントリオールに帰ってきた、とホッとします。モントリオールの歴史に刻まれつづけ、このまま変わらずあってほしい、とみんなが願う「オレンジ・ジュレップ」は、成功の象徴としても輝き続けています。

HPはありません。そこも良いところ。
こちらはYelpの情報です


ビール
世界的に人気のあるビール、贔屓目を差引きしても、ケベックは世界有数の美味しい地ビールの宝庫です。

モントリオールにもブリュワリーが点在し、瓶詰めのものをスーパーやデパヌール(コンビニ)、SAQ(政府運営の酒屋)で買えますが、やはりブリュワリーで樽から注がれた「生ビール」を楽しむのが一番です。

今年は例年以上に厳しい寒さのモントリオールですが、ビール好きに嬉しい朗報が届きました。

なんと、モントリオールのブリュワリーで74種類ものビールが楽しめる「パスポート」を$40で販売するというもの。

19ヶ所で楽しめますから、色んなブリュワリーやお店を巡りながら、モントリオール・ビールを制覇できます。一杯5oz(150ccほど)ですが、お試しには充分。本当に気前の良いイベントで、こういうことをサクッとやってしまうのが、モントリオールの面白くて楽しいところ。

もちろん$40にチップは含まれておりませんので、少し弾んで渡しましょう。ま、一杯では足りないので、追加ビールと食事もオーダーしたくなりますが。

「パスポート」はオーダーして3日で届き、期限は5月末までなので、テラスでビールの季節まで使えます!さらに、このパスポートを3冊買うともう1冊は無料。

みんなで乾杯!寒い冬を乗り切りましょう!

Le Passeport des Microbrasseries(ブラッスリー・パスポート)



santropol
モントリオールの大きなサンドイッチが名物のカフェ、サントロポール。

1976年オープン。今ほど健康やオーガニックと騒がれていない頃から、野菜たっぷりのサンドイッチを提供していました。

カラフルな店内、小さな裏庭もあり、誰かの家に遊びに来たような感覚。ボリュームはあってもヘルシーな感じのするサンドイッチ。そしてフェアトレードのオーガニックコーヒー豆を使用した自家焙煎コーヒー。

楽しく心地よく過ごせる空間と何度も行きたくなるメニューに、モントリオールらしさが溢れています。

ランチタイムは、サンドイッチハーフとスープのセットがおすすめ。他にも、ミルクシェイクなどのドリンク、アメリカンなケーキも美味です。
メニュー

ひとりでもいい時間が過ごせます
Cafe Santropol


モントリオールの公用語はフランス語ですが、ほとんどの人がバイリンガル、英語が通じます。

それに加え、多くの移民が母国語を守っているので、トリリンガル率はカナダの都市の中でも群を抜いて高く、21パーセント。実に、5人に1人は3ヶ国語を話すということになります。
ちなみに、トロント、バンクーバーがそれぞれ11%、10%ですから、フランス語が公用語として守られている効果がしっかり表れていると言えます。

トリリンガルのうち、フランス語と英語以外で一番多いのは、、

なんとアラビア語。

感覚的にはイタリア語かポルトガル語では?と思いましたが、確かに中近東からの移民が多いので納得です。

ちなみに日本語はというと、このマップにも載っておりません。(フランス語と英語以外の母国語分布マップ)
image
少々寂しい気もしますが、その分日本人が少なく、外国語習得にはうってつけの環境とも言えるのかも知れません。

モントリオールへいらっしゃい!


絵の子
日曜の夕方、家族と一緒にやってくる女の子。
大人の中に子どもひとりなので、大人達が会話に夢中になっている間、暇を持て余している様子。そのうち席を立ち、カウンターにやって来て、私に話しかけるようになりました。

彼女が話すのはフランス語。
移民の多いモントリオールでは、子どもも「外国人慣れ 」していて、当然の如く母国語で話しかけてきます。外国人を目にすると、逃げるか、あるいは必死に知っている英単語を探して、結局「sorry」を連発するような、外国人コンプレックスの強い日本人とは違います。
ケベック訛りのフランス語で、言いたいことをどんどん言ってきます。相手が思い通りに動くまで。

彼女の「遊んで」という欲求と、他のお客さんへの対応とで板挟みになった私は、お絵描きでその場を凌ごうとしました。用意してあった色鉛筆で彼女の似顔絵を描いてあげて、あとはひとりでお絵描きしてもらおうという算段。

が、しかし。

少女漫画の主人公のようにキラキラお目々に描いてもらった自分を見て、お嬢ちゃんは大喜び。彼女の好奇心に火がついたようで、今度は「どうやって描くの?」という質問攻めが始まりました。
結局、カウンター越しにお絵描き教室をしながら、コーヒーを作ったり片付けをしたり、、と、いつも以上に忙しい日曜の夕方を過ごした私。営業が終わると、どっと疲れてクタクタでした。

子どもって大変。

後日、キラキラお目々の自画像は、額に入れて大事に部屋に飾られていると、彼女のお母さんがそっと教えてくれました。

ある時から、彼女はカウンターにやって来る回数が減り、ひとりで黙々とお絵描きをするようになりました。何か聞きたい、見せたい時だけ、私の仕事の様子を見ながら、タイミングを見計らってやって来ます。

少し淋しいな、などと思いつつ、高さの合わないテーブルに向かい、集中して絵を描く姿を見ていると、いずれ大学生になり、カフェで勉強している彼女がリアルに思い浮かびます。

彼女のこれからの日常は、様々なカフェと共にあるのでしょう。未来にどこかのカフェでまた会えそうな、そんな気がします。

その時は、一緒にコーヒーを飲みながらお話しましょう。ケベコワのフランス語で。





 

ミドリ1

今、モントリオールは「ミドリ」の色が変わるとき。
短い新緑の季節が終わり、いよいよ初夏が始まろうとしています。

足元を気にしてうつむきがちだった冬と違って、上を向いて風を感じながら歩く街。
ミドリがあちこちに。

ミドリ3

ミドリ4

ミドリ2

ああ、心地いい。

ミドリ5



オーケストラ
日系アメリカ人のケントナガノ氏が音楽監督を務める、モントリオール交響楽団OSM(Orchrstre Symphonic de Montréal) 日系というだけで親近感を覚え、OSMに興味を持ち、いつか聴きに行きたいと思っていました。

ある日曜の朝、モントリオールの新聞 ”LaPresse” にOSMの案内が載っていました。気軽にオーケストラを楽しんでほしいというメッセージと共に、工夫を凝らしたプログラムがずらり。どれも「気軽さ」を反映したプライスです。

自分の予定と照らし合わせ、日程が合うチケットを早速購入。実は、プログラムにこだわりはなく、何でも良いからOSMのコンサートに行ってみたかったのです。プログラムによって会場が異なりましたが、せっかくなので新しいコンサート会場で行われるものを選びました。

当日は、少し早めに会場へ。すると、コンサートの準備をしているではありませんか。

これは驚き。舞台がさらけ出されています。スポットライトが煌煌と光る中で、ピアノが運び込まれたり、メンバーが集まって来たり。これも、モントリオールならではでしょうか?

そんな楽しい「前座」の後は、いよいよ本番の始まりです。新しい会場は、そこに居るだけで心地よい上、優雅なクラシックの音色に酔いしれました。知らない曲でも楽しめるクラシックは偉大です。

さて、この会場。舞台の奥にも席があって、コンサートを後方上部から観ることもできます。次回はあそこで聴いてみよう。

$30で気軽に楽しめるオーケストラ。OSMは、2014年に日本公演も行っていたようですが、やはりあの会場で前座から。モントリオールにいらっしゃる機会があれば、公演予定をチェックしてみてはいかがでしょうか?

OSM
http://www.osm.ca/en/discover-osm/hall

わたくし、新しいことには割と抵抗なく臨める方です。経験の許容範囲も広く、海外生活においても、新しいことにあまり怖さを感じないのですが、「髪を切ること」だけは別。その勇気が持てません。

 元々、髪質が硬く量も多いので、この特性を知っている美容師さんでないと怖い、というのが根底にあるのですが、これまで海外で髪を切って悲惨な結果になった例をいくつか見てきているのが、トラウマになっているようです。他人の痛い目を見てトラウマとは、少々図々しい気もしますが、そのくらい酷かったのです。

今から遡ること18年、当時ロンドンに住んでいた私を訪ねて来た妹とその友人。 友人の方は美容師の卵でしたので、流行の最先端、ロンドンで髪を切ることも大きな目的にしていました。今ほどインターネットが発達していない中、事前に雑誌で調べ上げたヘアサロンの地図を手に、妹と二人連れ立って意気揚々と出かけたまでは良かったのですが。

戻って来た二人を見て、一瞬目を疑いました。

二人とも見事なベリーショート、パイナップルがふたつ並んでいます。泣きたい気持ちを通り越して笑うしかないという状況。私も同情よりも可笑しさが勝ってしまい、目尻に涙を光らせながら笑う二人と一緒に大笑いしました。

モントリオールでも、同じようなことが起こりました。これも私本人ではないので申し訳ないですが、マンガに出てくるようなパッツンヘアーにされた男性。前髪も、もみあげ部分も、襟足も全てパッツン。ハサミを横に動かして切っただけ、という感じです。たまたまと信じたい、いや、夢だと信じたいくらい恐ろしい髪型。この時私の中に、海外で髪を切るのは危険とインプットされました。

ある日本人サッカー選手が、海外に自分の専属美容師を呼んで毎回髪を切っているという話にも大きく頷けます。私も、今や自分の美容院まで開いた「ロンドンのパイナップル」を呼び寄せるくらいにはなりたいのですが、まだそこまでの甲斐性はなく、実現していません。

モントリオールで髪を切ったことがない。何でも身体を張って試してみるのに、これだけは尻込みしている後ろめたさが常にありました。一度は試してみなければ。日本人の腕利美容師さんがいらっしゃると聞いていますが、どうせなら現地の技術で。

街を歩くと、ヘアサロンが気になり出します。ふと覗いた床屋の光景は、何とも微笑ましい。床屋のおじいちゃんがカットしているのは実のお孫さん。髪型はおじいちゃんとお揃いになりそうです。
床屋

 

トマトソース
世界で一番好きなカフェ、オリンピコから一本南の通りにあるパスタソース専門店。イタリア人が経営しているこのお店、オリーブオイルとペーストが多少置いてはありますが、壁一面がパスタソースです。 

モントリオールで家庭の食卓にのぼるメニュー、上位3位には入るであろうパスタ。女性の就業率が90%を超えるこの街で、家事のうち食に関して手軽さは最強。茹でてソースをかけるだけのパスタが受けないはずありません。スーパーには、トマト系、クリーム系など色んなバリエーションのパスタソースが並び、どれもなかなかのお味です。

そんな環境で、このパスタソース専門店。良いポイントを押さえています。

扱っているのが絶対的な需要があるトマトソースであること。場所はイタリアコミュニティ、経営者にとってのホームであること。周囲にも人気店があって人が多い立地であること。イタリア人が店内奥で手づくりしているのがちょっと見えること。

これだけ並んでいて専門店となると美味しそうに思えますし、ましてや本場イタリア人が作っているとなれば期待が膨らみます。パスタソースはストックできるし、どうせスーパーで買うならば、通りかかったら買っておこうという気にもさせられます。

さて、お味は?

トマトの味がしっかりして、美味しいです。スーパーで売っているナショナルブランドのものよりも美味しく感じるのは、前置きと期待値の高さゆえと思っていたら、実はご主人、人気イタリア料理店の出身とか。そのお店の味が家庭で味わえるというわけです。

あるとき、近くのベーグル屋さんの帰りに立ち寄ると、パスタソース以外の商品、オリーブオイルとペーストを試食させてくれました。焼きたてのベーグルをちぎって、オリーブオイルをたっぷり回しかけ、ペーストをこれまたたっぷり。これが美味しいのなんのって。試食のさせ方が大らかでイタリアっぽく、楽しい!

早速オリーブオイルを購入。色んな料理に使いますが、これもスーパーで買うのより美味しく感じます。通りかかるとオリーブオイルも買うようになりました。

この小さなお店、私のようなファンが多いことでしょう。通りかかると買ってしまう。通りの名にちなんで、勝手に名付けました。フェアモント・トラップです。

タプナード


DROGHERIA FINE
http://localmontrealtours.com/drogheria-fine-the-best-pasta-sauce-in-montreal/ 

家
モントリオール市には、20の行政区があります。フランス的、英国的、オフィス街、学生が多いなど、それぞれに特徴があり、雰囲気も面白さも様々。

その中でも一番モントリオールらしい地区が、プラトー・モンロワイヤル。少々私的な見解ではありますが、フランス色の強いこの地域に憧れを抱き、モントリオールにお店を出すならここ、とイメージを膨らませていました。

プラトーは、モンロワイヤルの東側に位置するフランス語圏の中心。おしゃれな住宅やお店が多く、街を歩くだけで写真に収めたい景色に次々と出会えます。住宅に外階段がついているのもこの地域の特徴で、アパートの内見で初めて外階段を上がった時の高揚感は今でも憶えています。アパートそのものは大したことなくても、やはり特別感がありました。

よく、モントリオールは「ヨーロッパの街並みを彷彿とさせる」と比喩されますが、それは欧米十把一絡(おうべいじっぱひとからげ)だと心の中に小さな抵抗を覚えます。この街が大好きなモントリオーラーなら、なおさらそう思っているでしょう。知名度ではヨーロッパに敵わないけれど、パリ、ロンドン、マドリード、どの街を歩いても、ここモントリオールと同じ表情には出会えないと。

モントリオールにいらっしゃる機会があれば是非、プラトー地区のお散歩を。観光スポットを巡るのも良いですが、プラトーでは、あなただけのひとコマに出会えるはずです。

私は、季節の変わり目、その日その瞬間を街歩きの中で見つけていました。春の訪れも夏の終わりも。それは、立春や立秋といった暦ではなく、あくまでも感覚だけで感じとるもの。自分基準です。

散歩のおすすめは夏の早朝、ひんやり涼しい時間帯、小鳥のさえずりをBGMに。

 

開店後に始まった「商品」のテコ入れ。商品開発というのはお店のオープン前に行い、その後はひたすら同じものを作り続けるものだ、と考えていた私には、驚きでした。

そして、そのやり方たるや。

研究熱心とひとことでは済まされないくらいのこだわりようで、私に他店の商品を試食、そして試作をさせます。そのやり方も、私が考えているものと違いました。試食というより、ケーキなら、ひとつを完食する。太るし中性脂肪値は高くなるしで、決して役得と言えるものではありませんが、あくまでもお客さまと同じ食べ方をしてどう感じるかを知ることが目的。確かに理にかなっています。

例えば、苺のショートケーキの商品開発。私が最初に作ったものは、スポンジが若干粗くしっとり感がありませんでした。スポンジの口どけがどうしても納得いかないということで、短期決戦で商品を改善することになりました。

お店の休業日を利用して、予め決めておいたケーキ店やカフェ6ヶ所を訪れ、ショートケーキを6個試食、もちろん完食です。集中して食べると、スポンジの食感、クリームや苺とのバランス感、生クリームの種類まで違いが明確で、理想のカタチが見えてきます。その後、スポンジは基本的なレシピと様々な特徴あるレシピで何度も試作、全体のバランスを考えて、生クリームの種類や量、苺のカット方法も決めていきます。そして最終的には、これ!というオリジナルレシピをつくっていくという次第です。

ケーキの4番バッターを揃える、というポリシーのもと、全商品をもっと美味しくもっと美味しく、とその後も改善は続きます。終わりはありません。私は店の出納係で、税理士さんに経理はお願いしていたのですが、売り上げに対しての研究費が他に例のない高さだと言われました。それは、そのまま熱意のバロメーター、誇れることだと思っています。

誰がどんなとき発したかによって意味が大きく変わる「これは売れるよ!」。リップサービスやおだては、ノー・サンキュー。必要なのは、裏打ちされた自信を持って、こう言えるかどうかです。

「これは売れる!」


おわり

モントリオールにお店を出そう。そう決めたので、まず日本で始めることにしました。

それまでの私は、お菓子作りが趣味。手作りならば大概ほめられるということを経験から知っていたので、作ったものを友人や家族に振舞っていました。そして、よく言われるセリフを疑うことなく鵜呑みにしていたのです。

美味しい!これは売れるよ。 

30%ほどをリップサービスとして盛った反応と解釈していましたが、今となってはほぼ100%、食べた側のサービス精神によるものだったと思っています。なぜなら、私が作ったものを食べてコメントをくれた人たちからお代はいただいていないのですから。

お金を支払う代わりの誉めことば。そう言ってしまうと極端かも知れませんが、ヒトがお金を使うには理由がある。このことは、自分のお店をやって初めて実感した事実でした。

「これは売れるよ」と賞賛されたシュークリーム。開店当初がマックス。あとは日が経つにつれて少しづつ販売数が落ちていきました。

その時には、現実を認めたくない私がいました。初日からしばらくは完売。徐々に終了時間が延びて、閉店ギリギリで完売、そして1個、2個と残る日が出てきました。自分一人だったら、そのままズルズルと残る日に耐え切れず、割引で販売、などということを考えたでしょう。いわゆる、縮小均衡の考え方。

それを救ったのは、ワーホリでカナダに行き、たい焼き屋をオープンさせたツワモノ。海外でお店ができる、と思わせてくれた人でした。
http://montrealcake.blog.jp/preview/edit/d190ab3477595a443180fcf80e8f26df 

彼の指示により、お菓子類はショーケースから撤去。商品のテコ入れが始まりました。

つづく

チャーハン
世界の大都市には必ずあるチャイナタウン。どの国にも自分たちのワールドを創り、自国と同じ生活を当たり前のように送っているのを目にするたび、天晴れ(あっぱれ)ということばが心に浮かびます。

文化の架け橋になりたいとか伝統を伝えたいという大義名分があるようには思えず、そこに感じるのは「生きる」ためのしたたかさ。自分たちの文化を売り、何でも商売にしてしまうその商才も天晴れです。

モントリオールも300万人の大都市、例に漏れずチャイナタウンがあります。中華料理店や食材店はもちろん、ベトナム料理の店も多く、小さいながらも事足りるチャイナタウン。フランス語では「カルティエ・シノワ」と呼ばれるこの小さなワールドについつい足が向いてしまいます。アジア人ですから。

中華食材店へ行けば、そば、醤油、味噌、のりなどの日本食材が手に入り、日本と同じ料理を作ることを可能にしてくれます。外国にいると日本食が恋しい、というのはひと昔前の話、今や納豆や大判焼きでさえ冷凍で売られているのですから、冷凍技術と流通インフラの発達に感謝です。

さて、写真のチャーハン。チャイナタウンで足しげく通った中華料理店でいつもオーダーしていたもので、具はホタテの貝柱と卵白、ネギのみというシンプルなもの。「見た目は普通ですが味はとびきり」と続けそうなところですが、本来は「見た目も味もとびきり!」の逸品なのです。

この写真を撮った日は料理長が不在だったのか、いつもと違うプレゼンテーションで出てきました。味は同じなのに、非常に残念。だって、食へのワクワク感を盛り上げてくれるのはまず見た目、右脳に訴える第一印象が料理を美味しくしてくれるのに。

さて、これがあるべき姿。これが見たくて、いつもオーダーしてしまいます。

天晴れチャーハン、こうでなくちゃ!
チャーハン2


 

モントリオールで営業していたカフェ、週末になると、客層が少し変わります。大学生やファミリーが加わって、終日店内もテラスも一層賑やかになりました。

お店からワンブロック南に住んでいたご家族。平日は3歳くらいのお嬢ちゃんがパパとお店に来ていましたが、週末になると奥さんも一緒になって、テラス席でいつものオーダーをします。奥さんはお腹が大きく、旦那さんがマメに動いていました。

「イクメン」という呼び名が先歩きして、現実が追いついていない日本とは大違い。モントリオールのパパたちは、本当によく子どもの面倒を見ます。男性が育休をとるのも何ら珍しいことではありません。 というのも、ケベック州では育休も一部有給、普段の給料の70%をもらえるというのですから、ジョワドヴィーヴル(人生楽しく!)の精神に則れば、それは自然な選択と言えるでしょう。

さて、ある週末、このご家族に奥さんの姿がありませんでした。お腹もかなり大きかったので、いよいよかなと察したところ、ビンゴ!何と、次週の平日に、新しい家族の一員を連れて4人で来店してくれました。

病院のガラス越しに見るような新生児が、パパに抱かれてカフェにいる。聞けば生後5日目とか。何がというわけではないのですが、私は気が気でなく、落ち着かない半日を過ごしました。

それにしても、何と大らかなのでしょう。

そういえばこの奥さん、出産前もアイスコーヒーの一番大きなサイズを、おかわりまでして好きなだけ飲んでいました。妊娠中のコーヒーは控えた方が良いと聞いた気がしますが、あまり神経質にならない方が、よほど精神衛生上良いのでは?と思わせてくれました。

ちなみに、カナダの出産は無痛分娩。痛くないそうです。だからママも復帰が早く病院に入院することもありません。お腹を痛めて生んだ子なんだから、というセリフも聞くことはありません。

こうしてうちの常連さんになった最年少のベビー、平日はパパに連れられて3人で、週末は奥さんも一緒に4人でご来店、いつもとびきりの笑顔を振りまいてくれました。奥さんは出産後ほどなくして仕事復帰をしたようです。

女は強し。

ファミリー




 

モントリオールのカフェメニューはフランス語、その中に「アロンジェ」というものがあります。

アロンジェとは、フランス語で「長くする、伸ばす」という意味で、エスプレッソを長めに抽出したもの。濃いエスプレッソの力強さをお湯で少し和らげたものです。フィルターコーヒーとは違う味わいで、いつも「アロンジェ」というお客さまが多くいました。かく言う私もアロンジェ派。

自分のお店のアロンジェは、毎日試飲を兼ねて飲んでいましたし、いろんなカフェに行っては、アロンジェをオーダー。コーヒー豆の味はダブルエスプレッソで確認するという 同業者のお客さまもいらっしゃいましたが、私はアロンジェの方が「わかる」感じがしました。

これは、どの種類が試飲に向いているというよりは、毎日同じものを飲むということが重要ということ。私の場合は、それをアロンジェと決めていました。

以前、日本の女優さんが、毎朝朝食メニューはきっちり同じものにして決まった時間に食べている、体調を知るバロメーターになるから、と言ってるのを聞いて、プロだなあと感心しました。

コーヒーの味をみるには、女優さんの場合とは逆で、自分の体調を同じにしておかなければなりません。毎日決まった時間に飲むアロンジェでも、寝不足のとき、喉が渇いているとき、など自分の状態でコーヒーの味、というよりは印象が変わりますから。

毎日同じものを同じ時間にオーダーするお客さまたち。彼らに「今日は違う」と思われないよう、それをひとつの指針として商品のクオリティを保つ緊張感。ほとんどが常連さんで、その意識も自然に高まったことは恵まれていたと思います。

どこどこで修行して自分のお店をオープンしたとよく聞きますが、毎日同じ味とサービスを提供し続けることこそ修行のようなもの。オープンしてからが本番。終わりのない楽しい勉強です。

今日はバレンタイン。バレンタインといえばチョコレート。女性が男性にチョコレートを渡して想いを告白できる日と認識しています。

が、そんなことを言うと、四半世紀前の話と笑われそうなほど、最近は聖なる日が形を変えています。義理チョコはもとより友チョコなど、イベント化が年々進んでいて、大量に作れる友チョコレシピも出回り、手伝うママも大変とか。

モントリオールのバレンタインは、恋人のための日、結婚記念日のようなものでしょうか。

この日は、手に花束を持って街ゆく男性をよく見かけます。それがどんな人であろうと、サマになって見えるのは、滲み出る幸せのオーラから。もちろん、チョコレートもプレゼントとして贈られるので、ショコラティエは特別の賑わい。バレンタインディナーを謳い、軽く便乗するレストランもあります。

モントリオーラーの友人曰く、バレンタインは「リセットの日」。お互いに相手を思いやる、そんな良い機会になると言います。花束やチョコレートのプレゼントにバレンタインディナー、「ハッピー・バレンタイン!」を合言葉に、ドラマや映画の中の世界がこの日は普通に行われています。男性が主導というわけでもなく女性も一緒にこの日を盛り上げる。彼と彼女、2人が主役です。

ジョワ・ド・ヴィーヴル(人生楽しく)と男女平等。

バレンタインにも表れているこの2つのことば。毎年2月14日になると思い出し、モントリオールの良い面を再認識する良い機会になっています。

ハッピー・バレンタイン!

chole(ショコラティエ)
https://leschocolatsdechloe.com

ビブロス
朝が早いモントリオールのカフェ。ほとんどのお店が朝食を提供しています。

簡単なクロワッサンやマフィンから卵料理やパンケーキまで、どのお店も工夫を凝らし、朝食専門店もあるほどです。

目玉焼き又はオムレツにハムかベーコンかソーセージ、角切りフライドポテトに甘く煮た豆、フルーツ、トースト、お代わり自由のコーヒーが定番。家庭でも作れそうな差がつけにくい内容ですが、どこどこの卵の焼き加減が最高だ、ベーコンの焼き方はどこが一番だ、などと不思議とネット上の口コミ数が多いのが「朝食」です。

土日は朝昼兼用の「ブランチ」として提供され、人気のお店は行列。雪の中、目玉焼きのために並ぶなんて、どうして?とモントリオール初級の頃は本当に疑問でした。

多民族が共存する街モントリオールには、定番の朝食と一線を画すお店も色々あります。中でもユニークなのが、イランの朝食。初めて行った時には、周囲のお客さんが食べていたものと同じものをオーダーしました。

フェタチーズが入った柔らかいオムレツ、カゴに入ったピタパンとふんわりほんのり甘いパン、自家製ジャムにコーヒー又はペルシャティーは、お店の朝食の看板メニューです。自家製ジャムは、バラやピスタチオ、グレープフルーツなど数種類から選べ、そのエキゾチックな香りにすっかり魅了されてしまいました。

朝食そのものも魅力的ですが、このカフェは窓が大きくて天井が高く、雰囲気も◎。
ここの朝食のためなら10分や20分雪の中で待つのも良しと思えるのは、モントリオール上級昇格と甘いジャッジを下すとしましょう。

 Byblos
 http://bybloslepetitcafe.ca

モントリオールで営業していたカフェは、90%が常連さんでした。いや、90%のお客さまが常連になってくれたという方が正しいかも知れません。

しかもその常連度、半端ではありません。ほぼ毎日、または決まった曜日に同じパターンでご来店、同じオーダーをします。「ルーティーン」ということばが流行る昨今、彼らの行動はまさにそれ。

コーヒーメニューはともかく、毎朝大きなバナナマフィンを2個召し上がるお客さまには、たまには違う種類を試してみれば良いのに、と思いましたし、健康のためのランニングの途中で立ち寄り、チョコチャンククッキーとホットチョコレートをオーダーするお客さまには、お節介なアドバイスをしたくなりましたが、ほとんどのお客さまがこの調子。オーダーがブレることはありませんでした。

一日の大半をカフェで過ごすお客さまも少なくありません。平日は仕事をする人々、土日は勉強をする学生たちがカフェをカフェたるものにしてくれました。長居は大歓迎。心地良い証拠ですから。

満席の店内は、どのテーブルもリンゴのマーク。ほぼ100%がアップルコンピューターということも驚きでしたが、大学生が良く勉強すること、ノマドワーカーが多いことなど、話には聞いていたことは本当だということがわかりました。

朝はコーヒーとマフィン、昼にはサンドイッチやサラダなどのランチ、食後のコーヒーとおやつにクッキー、そしてまたコーヒー、何度もレジに来てはオーダーしてくれます。あらゆることにおいて日本人とは違う行動パターンに触れるうち、文化の違いの面白さを実感。何故だろう?と考えるようになりました。

恥ずかしながら、大学時代の専攻は「国際文化」。机上の理論や言語だけで日本との違いを捉えていた自分のなんと浅はかなこと。実感に勝るものはなく、そこからが始まりだと「実感」しました。

東カナダ菓子を通して、文化を深掘りしていく。
私のライフワークです。

↑このページのトップヘ