きっかけの街 モントリオール

モントリオール製菓学校公式ブログ。 モントリオールのこと、お菓子のこと、北米の日々を綴ります。

タグ:お菓子

キャロットケーキ
初めてキャロットケーキを食べた時のことは今も忘れられません。18年前のロンドンでのことです。

人参が入っているというのにそれを感じさせない魅惑のスパイスの香り、生地のしっとり感とナッツのコントラスト、外に塗ってあるクリームも初めての味。見た目は決して美しくないのですが、その「外国っぽさ」にすっかり魅了され、 当時日本ではほとんどお目にかかれなかったキャロットケーキを思い出しては、いつかまた食べたいと思ったものです。

そのキャロットケーキとの再会を果たした地はモントリオール。定番ケーキとして、どのカフェにも置いてあります。多少の違いはあれど、どこで食べてもハズレなし。スライス面が手の平ほどある大きなサイズですが、ペロリといけてしまう美味しさです。

外国の味、キャロットケーキ。どの国で食べても同じだと思っていたら、そうでもないようです。アメリカのキャロットケーキはとにかく甘い。マフィンもパウンドケーキも全てにおいて甘く、モントリオールのそれらとは違います。モントリオールの、特に食においてのこだわりは、フランスのDNAによってしっかり受け継がれているのでしょう。

食べものが美味しい。個人的な判断基準ではありますが、これは私がモントリオールそして東カナダが好きな大きな理由のひとつです。

フランスとアメリカ、双方のいいとこ取りをしたようなモントリオールのお菓子たち。ケベック州以外、トロントやプリンスエドワード島ではイギリス菓子が主流ですが、こちらもハイレベル。スコーンやショートブレッドは本国を凌駕する見た目とお味です。東カナダのお菓子は、フルーツやナッツをたっぷり使い、素材の味が活きているのが特徴。そこに自由な発想で定番にバラエティーと楽しさという新しいエッセンスを加えています。

キャロットケーキを取り上げたので、人参についても触れておきましょう。ケベックの人参は色も味も濃く、しっかりと人参の味がします。オーガニックならなおさらです。土の違いか種の違いか。日本では味わえない人参で作るキャロットケーキは、まさに本場の味。機会があれば手作りで。ブラックコーヒーかストレートティーと共にどうぞ。
 

インターネットの普及で無料の情報が溢れる時代、料理やお菓子のレシピがいくらでも手に入るようになりました。

小さい頃からモノを作るのが好きで、初めて手にした『お菓子も作っていい?』というレシピ本は、穴が空くほど眺めて読んで、小学4年の頃から、クレープやクッキー、プリンにマシュマロなどを学校が休みのたびに作っていました。今思えば、この1冊が全てだったことは、私にとって幸運だったと言えます。

というのは、迷いがないから。

同じレシピで作っているのに上手くできる時もあれば失敗することもある。なぜだろうと考えます。『お菓子も作っていい?』は私にとってのバイブルでしたから、レシピがおかしいなどと疑うことはしませんでした。何度も作って、上手くできる確率が高まってくると、そうか!とコツが掴めてきます。他にもレシピが沢山あって、これは上手くいかなかったから次、と変えていたら、いつまでたっても「そこ」にたどり着けません。

同じものを同じレシピで何度も作る。今、生徒さんにするアドバイスは、この時には理論的には理解していなかったけれど、職業としてモノを作るようになってから、深く腑に落ちた最重要ポイントです。

え?そんなこと?と思われるかも知れませんが、1回より3回、3回より10回、100回、1000回と作り込むほどそれが自分のものになります。その先にアレンジや改善ができるようになる、そういうしくみです。

モントリオールでも人気のカフェは1日に1000杯近くのコーヒーを提供し、ベーグル店では10000個以上のベーグルを焼いています。私も試行錯誤を経て完成させたひとつのレシピを繰り返し作ることで、私のマフィンやビスケット、スコーンにベーグルができあがっています。

レシピをたくさん集めることはナンセンス。
レシピはひとつでいい。 それをひたすら作りましょう。

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