きっかけの街 モントリオール

モントリオール製菓学校公式ブログ。 モントリオールのこと、お菓子のこと、北米の日々を綴ります。

カテゴリ:モントリオール > モントリオールのカフェの営業

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モントリオールで営業していたカフェのお客さま。学生やノマドワーカー、近所の方々、ファミリー、と、客層はバラエティに富んでおりましたが、この方は、そのどの層にも当てはまらない存在感がありました。

いつもシックな黒のお洋服、サングラスをかけていることも多かったのですが、その姿を見るたびに思い出したのは、桃井かおりさん。

カフェの最後のお客様が彼女、うちの Momoiさんでした。オーダーは、アイスアメリカーノ。晴れた暑い日のことで、今でも鮮明に憶えています。

muffin
モントリオールで営業していたカフェのご近所に、バナナマフィンが好きで好きで仕方がない、というお客さんがいました。

毎朝、コーヒーとバナナマフィンをテイクアウトして行くのですが、週末はボーイフレンドを連れてやって来て、写真のようなオーダーをします。 そして、更にバナナマフィンをお持ち帰り。

飽きずにいてくれることに感謝すると同時に、味を絶対に落とせない、と思ったものです。

バナナマフィンの美味しさの決め手は、やはりバナナ。皮を剥いた瞬間にその日の出来がわかるくらい気をつかい、最適な状態を準備していました。フルーツを使ったマフィンは他にもありますが、バナナがある意味一番繊細な素材。身近で手軽なフルーツなのに面白いです。

モントリオールでは、オーガニックのバナナが普通のバナナと同様に手に入ります。一番美味しいのは、オーガニックバナナの春から初夏にかけての時期。気温が熟成の速度に影響するようで、微妙な違いといえばそれまでですが、この時期のバナナマフィンが最高です。

 

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モントリオールのカフェに、ほぼ毎日立ち寄るお客さん。

いつもオーダーは、フィルターコーヒーの特大。一杯づつ淹れるスタイルでしたので、姿が見えるとすぐにコーヒーをつくる準備にとりかかっていました。

早くコーヒーをつくらなくちゃ、そう思わせたのは、この方がはいているローラーブレードのせいかも知れません。毎回ブレードでサーッとやって来ますので、こちらもドライブスルーのような感覚になって、早く対応しなくては、と焦るのでした。

最初こそオーダーを聞いていましたが、そのうち何も言われなくてもフィルター特大をつくるようになりました。言葉を交わすこともなく、日々、無言でしたが、また来てくださることが最高のコミュニケーション。私にはそれが心地よく、毎回この方の姿が見えると、急ぎつつも心の中にはホッとする安堵感がありました。

ところでこの方、誰かに似ています。

ジョコ
ロジャースカプの観戦に行ったとき、「あ!」つながりました。

 

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この写真、モントリオールのカフェの開店日、鏡に映った店内です。

モントリオールでカフェを開くため動き出したばかりの頃、ふと立ち寄ったアンティークのお店で一目惚れしました。幅2mほどの大きな大きな鏡です。鏡の周囲には細工が施され、古めかしいアンティーク品が並ぶ中、豪華さと存在感が際立っていました。

聞けば、ホテル・リッツカールトンの大改装に伴い出てきた調度品とか。リッツカールトンのロビーの中央に設置され、その前には四季折々の花が飾られていたようです。

リッツカールトンといえば、モントリオールでも100年以上の歴史あるホテル。多くの人が行き交う様子を見守ってきたのでしょう。


自分のお店に是非飾りたい。

この鏡に映ってきた光景に想いを馳せ、これからここに映し出される物語にワクワクし始めた瞬間でした。

私のお店で、たくさんの人々の日常を映してきたこの鏡、今でもモントリオールのとあるカフェで、物語の続きを映し出しています。


kids
モントリオールでは、女性の就業率が高く、保育園が充実しています。公立なら、1日$7で預けられますし、ナニー(ベビーシッター)を雇うのも一般的です。男女同じように働き、同じように家事や育児をする。フェアな社会だと思います。

モントリオールで営業していたカフェの向かいにはナニーのおばちゃんがいて、何人かの子どもを預かっていました。週に2〜3回はカフェにやって来て、子ども達のおやつと自分のコーヒーをオーダーし、しばし時間を過ごしていました。

私はナニーを雇ったことがありませんので、どんなルールになっているのか詳しいことはわかりませんが、預かった子どもを連れて外出するのは、自分がナニーだったら緊張するものだと想像します。

ところが、このおばちゃんは、細かいことを気にしないというか、大らかというか、放任主義。私が言うのも何ですが。。カフェで過ごしている間も、子ども達に対しては、まるで自分の子どものように接していました。

写真は、ある日のおばちゃん家の玄関の風景。
道路に子ども達だけが出ていることに、私は気が気でなく、子ども達の無事を見守るべく、お客さんが来ないことを祈っていました。何かあったら出て行く準備もして。

ほどなくしておばちゃんは現れ、どこかへ出かけて行きました。

さて、この日の夕方、おばちゃんと子ども達はカフェにやって来て、クッキーをあるだけとコーヒーをオーダー。おばちゃんは、いつも営業の終わり頃に来るので、お菓子が残っている日は、大概「あるもの全部ちょうだい」と言ってくれる有り難いお客さんでもありました。

しばらくすると、子ども達のママが現れました。子ども達は嬉しそう。ママも嬉しそう。おばちゃんはホッとした表情をしています。

あまり神経を使っているようには見えなくとも、やはりナニーは大変な仕事。今日一日の使命を終えて一息つくおばちゃんが、その瞬間はカフェの中で一番輝いていました。

こんな場面は、何にも代え難い、私にとっても嬉しい瞬間です。



絵の子
日曜の夕方、家族と一緒にやってくる女の子。
大人の中に子どもひとりなので、大人達が会話に夢中になっている間、暇を持て余している様子。そのうち席を立ち、カウンターにやって来て、私に話しかけるようになりました。

彼女が話すのはフランス語。
移民の多いモントリオールでは、子どもも「外国人慣れ 」していて、当然の如く母国語で話しかけてきます。外国人を目にすると、逃げるか、あるいは必死に知っている英単語を探して、結局「sorry」を連発するような、外国人コンプレックスの強い日本人とは違います。
ケベック訛りのフランス語で、言いたいことをどんどん言ってきます。相手が思い通りに動くまで。

彼女の「遊んで」という欲求と、他のお客さんへの対応とで板挟みになった私は、お絵描きでその場を凌ごうとしました。用意してあった色鉛筆で彼女の似顔絵を描いてあげて、あとはひとりでお絵描きしてもらおうという算段。

が、しかし。

少女漫画の主人公のようにキラキラお目々に描いてもらった自分を見て、お嬢ちゃんは大喜び。彼女の好奇心に火がついたようで、今度は「どうやって描くの?」という質問攻めが始まりました。
結局、カウンター越しにお絵描き教室をしながら、コーヒーを作ったり片付けをしたり、、と、いつも以上に忙しい日曜の夕方を過ごした私。営業が終わると、どっと疲れてクタクタでした。

子どもって大変。

後日、キラキラお目々の自画像は、額に入れて大事に部屋に飾られていると、彼女のお母さんがそっと教えてくれました。

ある時から、彼女はカウンターにやって来る回数が減り、ひとりで黙々とお絵描きをするようになりました。何か聞きたい、見せたい時だけ、私の仕事の様子を見ながら、タイミングを見計らってやって来ます。

少し淋しいな、などと思いつつ、高さの合わないテーブルに向かい、集中して絵を描く姿を見ていると、いずれ大学生になり、カフェで勉強している彼女がリアルに思い浮かびます。

彼女のこれからの日常は、様々なカフェと共にあるのでしょう。未来にどこかのカフェでまた会えそうな、そんな気がします。

その時は、一緒にコーヒーを飲みながらお話しましょう。ケベコワのフランス語で。





 

モントリオールで営業していたカフェ、週末になると、客層が少し変わります。大学生やファミリーが加わって、終日店内もテラスも一層賑やかになりました。

お店からワンブロック南に住んでいたご家族。平日は3歳くらいのお嬢ちゃんがパパとお店に来ていましたが、週末になると奥さんも一緒になって、テラス席でいつものオーダーをします。奥さんはお腹が大きく、旦那さんがマメに動いていました。

「イクメン」という呼び名が先歩きして、現実が追いついていない日本とは大違い。モントリオールのパパたちは、本当によく子どもの面倒を見ます。男性が育休をとるのも何ら珍しいことではありません。 というのも、ケベック州では育休も一部有給、普段の給料の70%をもらえるというのですから、ジョワドヴィーヴル(人生楽しく!)の精神に則れば、それは自然な選択と言えるでしょう。

さて、ある週末、このご家族に奥さんの姿がありませんでした。お腹もかなり大きかったので、いよいよかなと察したところ、ビンゴ!何と、次週の平日に、新しい家族の一員を連れて4人で来店してくれました。

病院のガラス越しに見るような新生児が、パパに抱かれてカフェにいる。聞けば生後5日目とか。何がというわけではないのですが、私は気が気でなく、落ち着かない半日を過ごしました。

それにしても、何と大らかなのでしょう。

そういえばこの奥さん、出産前もアイスコーヒーの一番大きなサイズを、おかわりまでして好きなだけ飲んでいました。妊娠中のコーヒーは控えた方が良いと聞いた気がしますが、あまり神経質にならない方が、よほど精神衛生上良いのでは?と思わせてくれました。

ちなみに、カナダの出産は無痛分娩。痛くないそうです。だからママも復帰が早く病院に入院することもありません。お腹を痛めて生んだ子なんだから、というセリフも聞くことはありません。

こうしてうちの常連さんになった最年少のベビー、平日はパパに連れられて3人で、週末は奥さんも一緒に4人でご来店、いつもとびきりの笑顔を振りまいてくれました。奥さんは出産後ほどなくして仕事復帰をしたようです。

女は強し。

ファミリー




 

モントリオールのカフェメニューはフランス語、その中に「アロンジェ」というものがあります。

アロンジェとは、フランス語で「長くする、伸ばす」という意味で、エスプレッソを長めに抽出したもの。濃いエスプレッソの力強さをお湯で少し和らげたものです。フィルターコーヒーとは違う味わいで、いつも「アロンジェ」というお客さまが多くいました。かく言う私もアロンジェ派。

自分のお店のアロンジェは、毎日試飲を兼ねて飲んでいましたし、いろんなカフェに行っては、アロンジェをオーダー。コーヒー豆の味はダブルエスプレッソで確認するという 同業者のお客さまもいらっしゃいましたが、私はアロンジェの方が「わかる」感じがしました。

これは、どの種類が試飲に向いているというよりは、毎日同じものを飲むということが重要ということ。私の場合は、それをアロンジェと決めていました。

以前、日本の女優さんが、毎朝朝食メニューはきっちり同じものにして決まった時間に食べている、体調を知るバロメーターになるから、と言ってるのを聞いて、プロだなあと感心しました。

コーヒーの味をみるには、女優さんの場合とは逆で、自分の体調を同じにしておかなければなりません。毎日決まった時間に飲むアロンジェでも、寝不足のとき、喉が渇いているとき、など自分の状態でコーヒーの味、というよりは印象が変わりますから。

毎日同じものを同じ時間にオーダーするお客さまたち。彼らに「今日は違う」と思われないよう、それをひとつの指針として商品のクオリティを保つ緊張感。ほとんどが常連さんで、その意識も自然に高まったことは恵まれていたと思います。

どこどこで修行して自分のお店をオープンしたとよく聞きますが、毎日同じ味とサービスを提供し続けることこそ修行のようなもの。オープンしてからが本番。終わりのない楽しい勉強です。

モントリオールで営業していたカフェは、90%が常連さんでした。いや、90%のお客さまが常連になってくれたという方が正しいかも知れません。

しかもその常連度、半端ではありません。ほぼ毎日、または決まった曜日に同じパターンでご来店、同じオーダーをします。「ルーティーン」ということばが流行る昨今、彼らの行動はまさにそれ。

コーヒーメニューはともかく、毎朝大きなバナナマフィンを2個召し上がるお客さまには、たまには違う種類を試してみれば良いのに、と思いましたし、健康のためのランニングの途中で立ち寄り、チョコチャンククッキーとホットチョコレートをオーダーするお客さまには、お節介なアドバイスをしたくなりましたが、ほとんどのお客さまがこの調子。オーダーがブレることはありませんでした。

一日の大半をカフェで過ごすお客さまも少なくありません。平日は仕事をする人々、土日は勉強をする学生たちがカフェをカフェたるものにしてくれました。長居は大歓迎。心地良い証拠ですから。

満席の店内は、どのテーブルもリンゴのマーク。ほぼ100%がアップルコンピューターということも驚きでしたが、大学生が良く勉強すること、ノマドワーカーが多いことなど、話には聞いていたことは本当だということがわかりました。

朝はコーヒーとマフィン、昼にはサンドイッチやサラダなどのランチ、食後のコーヒーとおやつにクッキー、そしてまたコーヒー、何度もレジに来てはオーダーしてくれます。あらゆることにおいて日本人とは違う行動パターンに触れるうち、文化の違いの面白さを実感。何故だろう?と考えるようになりました。

恥ずかしながら、大学時代の専攻は「国際文化」。机上の理論や言語だけで日本との違いを捉えていた自分のなんと浅はかなこと。実感に勝るものはなく、そこからが始まりだと「実感」しました。

東カナダ菓子を通して、文化を深掘りしていく。
私のライフワークです。

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モントリオールで営業していたカフェの向かいに、バイオリンの修理工房がありました。

北米全土、そしてヨーロッパからも、バイオリンはもちろん時にはチェロなどの修理依頼がひっきりなしに来るこの工房、その信頼度、技術度の高さが伺えます。それは経営者や職人さん達のお人柄にも表れていて、カフェの常連さんだった彼らは、みなさん感じの良い方ばかり、穏やかな紳士淑女のチームとお見受けしました。

このチームが夏の終わりに開催するマイス(とうもろこし)収穫祭にお招きいただいた時のこと、工房の中を見学したいと申し出たところ、快諾し丁寧に案内してくださいました。

細いらせん階段を上がると、2階、3階に幾つかの小さな部屋があります。修理待ちのバイオリンが整然と並んだ部屋、道具箱や部品と共に修理中のバイオリンが横たわる部屋、そして修理が終わって主人(あるじ)を待つバイオリンや弓が並ぶ部屋などなど。この小さな工房は、『全てはバイオリンのために』という表現がぴったり。そしてここで働く職人さん達も。

彼らは、もともとオーケストラなどでバイオリンを弾いていたので、この楽器を知り尽くすスペシャリスト。持ち合わせた絶対音感から、微妙な音の調整もお任せくださいという技術的な自信と、バイオリンが好きで好きで仕方ないという愛を持った方たちばかりです。その語り口調からも、バイオリンに対する想いが溢れていました。

こんな素敵な楽器が弾けたら、どんなに楽しいことでしょう。弾くことは難しいまでも、バイオリンの演奏を聴くことが特別なものになりました。この工房に出会ったおかげです。

Wilder & Davis
http://www.wilderdavis.com/en/luthiers

バイオリン2



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