モントリオールのカフェメニューはフランス語、その中に「アロンジェ」というものがあります。

アロンジェとは、フランス語で「長くする、伸ばす」という意味で、エスプレッソを長めに抽出したもの。濃いエスプレッソの力強さをお湯で少し和らげたものです。フィルターコーヒーとは違う味わいで、いつも「アロンジェ」というお客さまが多くいました。かく言う私もアロンジェ派。

自分のお店のアロンジェは、毎日試飲を兼ねて飲んでいましたし、いろんなカフェに行っては、アロンジェをオーダー。コーヒー豆の味はダブルエスプレッソで確認するという 同業者のお客さまもいらっしゃいましたが、私はアロンジェの方が「わかる」感じがしました。

これは、どの種類が試飲に向いているというよりは、毎日同じものを飲むということが重要ということ。私の場合は、それをアロンジェと決めていました。

以前、日本の女優さんが、毎朝朝食メニューはきっちり同じものにして決まった時間に食べている、体調を知るバロメーターになるから、と言ってるのを聞いて、プロだなあと感心しました。

コーヒーの味をみるには、女優さんの場合とは逆で、自分の体調を同じにしておかなければなりません。毎日決まった時間に飲むアロンジェでも、寝不足のとき、喉が渇いているとき、など自分の状態でコーヒーの味、というよりは印象が変わりますから。

毎日同じものを同じ時間にオーダーするお客さまたち。彼らに「今日は違う」と思われないよう、それをひとつの指針として商品のクオリティを保つ緊張感。ほとんどが常連さんで、その意識も自然に高まったことは恵まれていたと思います。

どこどこで修行して自分のお店をオープンしたとよく聞きますが、毎日同じ味とサービスを提供し続けることこそ修行のようなもの。オープンしてからが本番。終わりのない楽しい勉強です。